ボンジュール!皆さん。驚くほど早い梅雨明けとともに、酷暑や台風が立て続けにやって参りましたが、いかがお過ごしでしょうか。
東京都練馬区
(
練馬区立美術館
)、
栃木県宇都宮市
(
宇都宮美術館
)と全国巡回中の
「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」展
は、いよいよ夏の伊勢路――
三重県津市
に差し掛かり、6月30日から
三重県立美術館
での開催が始まったところです。展覧会場を写した多くの画像やお便りも届いています。
ちなみに当サイトは、「
サヴィニャック2018@宇都宮
」としての発信を一旦終了しました。しかし、
5つの開催館
(上記3館+
兵庫県立美術館
+
広島県立美術館
)は、本展の企画段階から知恵を結集し、初会場の開幕以降、今なお地道な調査研究を進めており、そのことが「
TOPICS & NEWS
」の土台となってきた点を鑑みて、第三会場以降の状況をお伝えする小コーナーをトップページに設けました。但し更新は、ごくゆるやかなペースとなる旨、どうぞご了解ください。また、
*各館での本展の詳細は、
こちら
*これまで綴られたトピックス一覧は、
こちら
*5館で共有の糧としている参考文献は、
こちら
*サヴィニャックに関する言説(参考文献より抜粋)は、
こちら
をご覧ください。
本題に戻って、三重の展示は、
巡回を通じた作品・資料、サヴィニャックの方法論や考え方に対する理解の深まり、これを来館者に伝える工夫が図られた内容
となっているのは、言うまでもありません。なかでも、三重で初めて採用されたのが、
《晩年のスケッチブック》(ref.5,6)
をページごとに見せる「
スライド・ショー
」です。二冊のスケッチブックについては、練馬・宇都宮において各ページの分析と撮影、宇都宮は「めくり展示」を行い、並行して三重で内容を詳しく調査しました。こうした協働の成果こそがスライド・ショーに他ならず、
トゥルーヴィル=シュル=メール時代(1982~2002年)のサヴィニャック(74~94歳)の仕事ぶりや関心事
の片鱗に触れることができます。
表紙に「
No.① トゥルーヴィルの切手、クロード・ボリング音楽学校
」と記された小さい方のスケッチブックを見ると、地域に根差したサヴィニャックの活動が窺い知れ、「第二のわが街」と捉えた港町に最適なモティーフ――
「かもめ」の展開、図案化の試行錯誤
を、つぶさに見て取れます。なお、
クロード・ボリング音楽学校
とは、作曲家、ジャズ・ピアニストの
クロード・ボリング
(1930年、カンヌ生まれ)の名を冠するフリー・スクール。1959年の創立以来、年少者から成人まで、音楽に関する多様な学びの場を
トゥルーヴィル=シュル=メール
で提供してきました。
もう一つのスケッチブック(表紙に「 No.④ ピンク・ワイン、トゥルーヴィルのメイモー公証人事務所ほか 草稿 」と記載)の内容も、描かれるモティーフや年代など、三重県立美術館の精力的な調査でさまざまなことが判明しました。あわせて、会場内のスライド・ショーで詳細をご覧いただければ幸いです。
さらに、三重では、美術館で巨大ポスターをどのように展示するか、肉筆原画と印刷広告の比較といった部分で、三つ目の会場らしい成熟が隅々に感じられます。
ところで、練馬( 開館1985年 、 貫井図書館 を含めた設計= 村井敬合同設計 )、宇都宮( 開館1997年 、設計= 岡田新一設計事務所 )、三重( 開館1982年 、設計= 富家建築事務所 )のギャラリー空間は、コンセプト、規模、ディテールがまったく異なります。こうした個性ある建築で、同じ展覧会を開催するにあたって、三重の場合、 親しみやすいモティーフの設営物としての利用(作品選びも含めて) で手腕が発揮されました。具体的には、空間や動線の独自性を活かしつつ、それをサヴィニャックの世界観でまとめる、幅広い来館者層を受け止めるために、 バナーや顔出し写真撮影パネルは初会場の倍以上 に増えています。
緑を望む大きなガラス窓に貼られた カットアウト・シール も、「この空間で、より多くの人々にサヴィニャックを堪能していただく」という心遣いの現れです。(今後、不定期に連載予定)